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偽島とかいう定期更新ネトゲ中心。その他オリジ等々。
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ここから続くセレナ(93)の人とのサマバケです!

文章だけですがまだ続くのぜ! ってことで続きに格納。

「良かった。断られたらどうしようかと思ってたわ」

昼間から屋台の立ち並ぶ中を歩きながら、独り言のようにそう言う。
私の横に並んで歩いている女性は、私の声に気付いて更に横に居るDGとの会話を止め、こちらを向いてきた。
陽射しが彼女に当たらないように、身体を捻った彼女に合わせてDGが日傘を傾けている。

「え、どうして?断らないわよ」

きょとんとして問う彼女の顔を見て、私はDGのように苦笑して溜息をつく。少しだけ心配していた自分が馬鹿らしかったから。
私よりも綺麗な、さらりと流れるような金の髪。触り心地の良さそうな白い肌。薄い肩。細い腕。そのくせ蠱惑的な魅力のある唇。そして芯の強そうな瞳。
自分ではまだ遠く及ばない「大人の女性」を見れば、諦めもつくというもの。

「だって、島で最後のお祭りでしょう?DGと二人で過ごしたいんじゃないかと思っていたもの」

いつもの笑顔を取り戻して答えた。
この人はDGが選んだ女性。そしてDGを選んだ女性。
それならそれで私は祝福すべきだ。未練がましい女にはなりたくないものね。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼女は微笑みを返してくる。

「ふふ、私だって貴女と話してみたいと思ってたからね。良い機会よ」

DGは彼女の横で慈愛のような笑みを浮かべ(筋肉が無いから傍目には分からないけれど、私には雰囲気で分かる。そしてどこか少し心配そうに)私達のそんな会話を聞いている。
ちらとそんなDGに向けた視線を戻しても、彼女はまだ微笑を浮かべていた。笑顔の似合う人だなあと何となく感想を持つ。

あら嬉しい。心配してたより良い人そうで良かった。ありがとう。よろしく。
色々と思ってはみても何故か言葉に詰まった。

「そう」

その一言しか出てこない。私はどうしたんだろう。
いつもならスラスラと止め処なく喋る事が出来るのに。
DGの横で彼の話す相手や彼自身に向けて微笑を浮かべながら話をかける事が出来るのに。
その場所には今はもう貴女が居るのね。

「……私はセレナ。Cellena D. Rayfrost。よろしくね」

私の様子を察してだろう、そう先んじられてしまった。
少し悔しい。それでも嫌な気分ではないから、差し出された手を握り返して微笑んだ。

「私はMM。それ以外の名前は捨ててしまったから」
「貴女ならミミって呼んでくれていいわ。こちらこそどうぞよろしく」

マーガレット。Margaret Murray。
その名前はDGについていく事を決めた時に置いてきた。MMというのはその時にDGから与えられた名前だ。
DGについていけば知らない世界を見られると思ったし、ずっとその背中を見て歩けるものだと思っていた。
だけどもしかしたら、私はもうMMという名前も忘れなければならないのかもしれない。ミミと呼ばれてはいけないのかもしれない。
彼の望むこれからにおいて私の存在が邪魔なら、彼が一つ所に留まってしまうのなら、私は自分の目的を優先させる為に彼から離れる事を選ぶだろう。
……その時私は何と名乗れば良いのだろう。
ああ、私を唯一、未だにマーガレットと呼ぶあの人はどうしているのかしら。

握り返したその手は細く、優しく、そして冷たかった。
少しだけ見上げなければいけないその顔の後ろからは陽光がギラギラと照りつけてきて――目眩を覚える。

ふ、と陰が差した。
DGから奪ったのであろう日傘を、彼女が私の上に差してくれている。
強すぎた陽射しが遮られた代わりに、優しい微笑が上から降り注いでいた。

「DG、珍しく気が利かないじゃない?」

私が呆けていると、彼女はDGに振り返ってそう笑う。

「これはどうも、面目無いね」

そう言って肩を竦めて嘆息するデイジーが何だか可笑しくて、セレナと二人でくすくすと笑い合った。









「世界の全てを見たい?へえ、それは壮大で素敵な夢ね」

通りの中頃にあったベンチに腰掛け、屋台で買ったアイスを食べながら私達は自分について語り合った。(ちなみに私はスイカバー、セレナはチューペットを咥えている、DGは「ベタつくので遠慮するよ」と言ってシガレットチョコを食べている……チョコはベタつかないのかしら)

「一生をかけても無理なのは分かってるわ。それでもやってみたいと思ってるの」
「私は世界の総てを愛している。でも、愛してる相手を見た事が無いなんておかしいでしょう?」

子供の大言、妄想と思われても仕方のないそれを、セレナは笑う事なく頷いてくれた。
それどころか率先して今まで何を見てきたか、世界のどんなものを、いやむしろどんな世界を見たいのか、そんな話も聞いてくれる。
暑い空気と太陽から逃げるような木陰の中、それでも彼女は輝いて見えた。
自分の事のように、楽しそうに話してくれる。
ああ、私はどんどんこの人の事を好きになっているんだな、と自分でも分かるようだ。

「……水を差すようで悪いが、ミミ。君はこれからどうするつもりなんだい?」

しかしふいに、DGがそんな事を言ってきた。

「私は世界を練り歩く目的を失ってしまった。これまでのようにはいかない」
「これからの事はセレナと話し合うつもりだが……私についてきてはその夢は叶わないんじゃないかね?」

そうだ。DGは復讐の為に世界を旅していた。一人の男を追って……少女達を連れ歩いていたのは、その道中で見捨てられなかったからだ。
私はそれについてきただけ。
……そして、その復讐すべき相手はおそらくもうこの世に居ないのだ。彼が旅をする理由も無くなってしまった。

DGの事は愛しているし、その傍に居たい気持ちも変わっていない。
――けれど私の一番の目的は違うのだ。
ここで歩みを止めてしまっては何の為に家を、兄を、友を捨てたのか分からない……それも、手に入らない人を追ってなんて冗談ではない。

「分かってるわ……けれど」

私は所詮ただの子供なのだ。一人では何処へも行けない。無理に旅立っても子供の足、何処で息絶えるか分かったものじゃない。

さっきまでセレナとはしゃいでいた空気も消え、私は俯いてしまう。
妥協案も解決策も見つからない。
涼しさを運んでくれる木陰が、何だか重いものに思えた。屋台の喧騒さえ遠く、耳障りに感じる。

「ふむ……セレナさえ良ければ、ミミの為に世界中を旅してみるのも悪くはないんだがね」

やはりどうにも出来ない事を悟っているのだろう。DGが妥協案をくれた。
だけどそれは嫌だ。勿論二人と一緒に居られるのは嬉しいけれど、私の我が侭でこの二人に妥協させるなんて――

「私のプライドが許さないもの。ありがたい話だけど遠慮するわ」

キッパリと言い放つ。
愛している人だからこそ、好きな人だからこそ、それには乗れない。
セレナの事はまだよく知らないけれど、DGはやっと自分の為に生きられるのだ。自分の生を生きられるのだ。それを自由に進む事を邪魔するなんて出来ない。

「……そうか。さて、どうしたものかね」

私の気持ちを察したのだろう。いつもなら「子供が遠慮するものじゃあない」くらいは言いそうなものだったが、何も言い出さない。
けれど断ってはみたものの……良い案があるわけでもないのだ。
これこそまるで子供の我が侭じゃないか。

また俯いて溜息をつく。
どうにもならないのだろうか。

そこでふと、話を聞きながらも黙っていたセレナがこんな事を言い出した。

「じゃあ、こんなのはどうかな――?」


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